110番通報事件から1週間は、モラ吉の機嫌の波もなく、
何となく平穏な時間が過ぎていた。(機嫌を伺う時点で普通ではないのだが)
すずめは、とにかく2つのパート先の退職日を決めるように説得し続け、
何とかひばりを納得させた。
期限は1週間後とし、それぞれの責任者の方にタイミングを見て伝える段取りとなった。
すずめ、気分は「岸壁の母」
2/14、世間はバレンタインデーと浮かれてる日の夕方に、
ひばりから「もうあけへんゎ」と死にそうな声の電話が入った。
「とにかく、こっちに避難しておいで!」と懇願するすずめに、
ひばりはこの期に及んで「ちょっと待って…」と、モゴモゴと言うのだ。
「いいから!!とにかくこっちに来いッッ!!!」よく覚えてないが、すずめは絶叫した。
すずめの住まいは、鉄筋コンクリート造の分譲マンションであるが、
この絶叫は両隣に響き渡ったと思われる…お騒がせしてスミマセン💦
絶叫しているすずめとは反対に「すずめ、怒鳴らんといて…直ぐにかけなおすから」
と落ち着いた口調というか、喜怒哀楽が抜けたようなひばりの声。
「絶対に直ぐにかけなおす」と約束して、一旦電話を切った。
約束通り、再入電があり「そっちに行ってもいい?」と尋ねるひばりに、
駅まで迎えに行く約束をして、時間までジリジリしながら待った。
到着時間になり、駅の改札口で仕事帰りの人たちからひばりを探した。
が、なかなかひばりが出てこない…ほんの1~2分の事なのに、気分はまさに「岸壁の母」。
やっと改札を出てきた土気色の顔をしたひばりを見つけ、喜んでいいのか悲しんでいいのか…
「ひ、ひばり…今日は暖かいけど、それでも何で上着を着てないのや…」(絶句)
薄くなった肩を抱き寄せて、我が家に連れ帰った。
私が、おかしいのかな?
ひばりは、モラ吉から違うVer.の「洗脳」にやられ始めていた。
モラ吉のまるで「金八先生」風の説教口調にである。
モラ吉は、エセ宣教師のような何の役にも立たない人生訓を延々と垂れ流していた。
あか~~ん!!ひばり、それヤバイやつや!!
すずめは必死に、モラ吉の矛盾点を突いてダークサイドに落ちかけているひばりを引っ張り上げた。
普通の状態であれば、「こいつメチャクチャ胡散臭いやつ」ってわかるのに、
精神をやられているひばりには、「自分がおかしいのかも?」「自分が悪いのかも?」と
自分を信じられなくなっている状態である。
モラ吉から離れれば、ひばりは元に戻るはず。一緒にいれば、増々 共依存のような状態になる。
すずめは必死に言葉をかけた。
自分を取り戻す準備に入ろう!!
同じベッドで寝て、明け方までたくさんの事を話した。
次の日は近所を散歩しながら、美味しいベーカリーでブランチを食べた。
その日に、ひばりの旧知である元某有名企業の副社長から、
家族問題に強い弁護士をご紹介いただけそうな、ありがたいお話が舞い込んだ。
何という強運!自分たちの中で、Xデー(別居日)を決めて動き始めよう!
と前向きな話をして、ひばりは帰宅していった。少しは、気が晴れただろうか・・・
翌日、ひばりはパート先に退職の意向をお知らせし了承を貰った。
どちらの責任者も「命が大切だから!」とひばりを励まして下さったそうだ。
まあ、ウィッグを着ける事になり、みるみるゲッソリと痩せ始めたひばりを見て、
それしか言いようもなかったのだと思う。
少しでも問題解決の1歩を進めたのだと、自分を納得させたすずめであった。
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