ひばりの脱毛症は、大学病院での激痛を伴う治療でも完治の見通しが立たなかった。
他の医院を探し、大学病院では処方できない薬を試すことになった。
何とか元気な毛髪が復活してくれれば、と祈ることしかできないすずめである。
モラ吉は同業他社に形式だけ「再就職」を果たしていた。
基本給は少なく(自分の経費で消える額)、出来高が大きな割合を占めるほぼフリーランサーのような
状態である。振込日は安定しないが、15万/月の生活費は渡してくれるようになっていた。
そして、夏が続いているような秋のあと、生温い冬が来て2024年の年明けを迎えた。
モラ吉の息子夫婦の来訪、そして嵐が吹き荒れる…
紹介した通りモラ吉はバツ3、ひばりが4人目の妻である。
最初の妻とはほんの少しの期間で離婚。
2番目の妻との間に男の子が1人、3番目の妻との間に女の子が1人、という元家族構成。
まさにシングルマザー製造機・時間差一夫多妻制男、というしかない。
2番目の結婚で授かった息子は、4歳くらいまでしか一緒に住んでいなかったが、
彼が成人後、モラ吉との交流が始まっていたらしい。
ひばり夫婦が最初に住んでいた賃貸マンションにも何度か訪れ、1泊したこともあるとか。
まぁ息子さん(ここでは太郎と呼ぶ)にしてみれば、ひばりは真っ赤な他人。
モラ吉にしてみても、4歳で生き別れて交流も希薄なまま大人になった訳である。
DNAこそ父親だが、節目筋目の大事なイベントも共有していない知らんオッサン状態では?
と推測する。
そんな太郎氏が結婚し、新妻を連れてひばりとモラ吉を訪ねて来ることになった。
ひばりの激怒、その理由とは?
息子の太郎が結婚相手を連れてくる、となったモラ吉は歓待したかったのだろう、
「寿司でもとってやるかぁ」など気持ちを大きくしていたらしい。
会社倒産後の3か月生活費ZEROが尾を引き、更に決まった日に入金もなく、
家計のやり繰りは自転車操業状態。ひばりは、うちにあるもので準備した。
余談だが、すずめとひばりは「料理上手」とよく言われる。
女性は子育ての経験や加齢によって、「食」に対するアンテナが鋭くなる傾向にあると思う。
我ら姉妹も自他ともに認める「オーガニックばばぁ」である。
「ばばぁ」という呼び方は物議をかもすと承知しているが、年を経てオーガニック志向になる
女性は間違いなく多い筈だ。
そして、太郎夫婦が来訪した次の日、今度はひばりが我が家に1泊するためにやって来た。
毎度ピーチクパーチク話したおすので、いつでも匍匐前進でベッドに入れるように
入浴を済ませるのだが、今回は新年の挨拶もほどほどに太郎とその妻の様子を話し始めた。
2人ともトイレに立った以外は、席に着いたまま一切動かなかったらしい。
当然モラ吉も同じである。よくある義実家に「嫁」として帰省したのと同じ状態である。
普段から適切な夫婦関係であれば、「嫁プレイ」をするのも出来たのやも知れぬが、
家事を一切手伝わずモラ発動中のモラ吉に対して、内心イライラしていたと思われる。
そんな中、事件はおこった。
ひばりをひっくり返させる発言が、太郎氏の妻から発せられたのだ。
ワイン、赤と白があるけどどっちがいい?
(嫁プレイ継続中)
席に着いたまま一歩も動かぬ、太郎氏の妻はこう答えた。
「次に出てくる料理によります」
えっつ?どーゆーことよ?
ゴルァ~~~ッ!!
ここはレストランちゃうぞ~!!!
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