すずめの怒声でケンカ別れのようになった翌日、
気まずい雰囲気のまま東京某所で待ち合わせ、軽食をとりながら打ち合わせをした。
弁護士の面談も3回目だったが、相談時間に無駄が出ないように説明の順番などを
再度確認して弁護士事務所に向かった。この日の東京もみぞれが降る寒い天気だった。
今すぐすべきことは、とにかく避難することです!
高級な受付のあるビルの中にある小洒落たオフィス。
担当の弁護士の方は、小柄な女性だった。
が、とにかく勢いのある方で、説明の途中で感極まって涙ぐむ暇もなかった。
今までの経緯をメモや録音、診断書を出して説明しながら、「慰謝料はとれますか?」と
質問したすずめを、弁護士(これよりMさんと表記する)はバッサリ切って落とした。
「あのですね、そんな些末なことに囚われてはいけません。」
「大事な事は、先ずはご本人の健康を取り戻すことです」「その場から離れたらすぐに回復します!」
「慰謝料なんて、取れたってたかが知れてます。健康になって稼いだ方が早いです!」
ド正論過ぎて、言葉が出ないすずめとひばり。本末転倒とはまさにこの事…
それはですね、「自己愛性人格障害」という病気です!
この面談で、Mさんより初めて「自己愛性人格障害」という言葉を教えていただき、
全ての事がクリアになったすずめとひばり。やはりモラ吉は普通ではなかった。病気だったのだ。
血液検査などでわかる病気ではないが、我々が言葉を尽くしても分かり合えない。
そう考えると、スッパリと気持ちを割り切ることが出来た。
直感通り、「お願いするならこの方だ」と確信した我々は、
その場で委任状を作成し、Mさんに代理人になっていただく契約をかわした。
「ハンコは…」「はい!!ありますッ!!」
「戸籍謄本は…」「はい!!ありますッ!!」
全ての必要書類を揃えていたので、事務処理はスムースにすすんでいった。
「ドキドキして帰るのが辛い家なら、帰らなければいいんですよ」
「星の降る場所、どこでも生きていけますから!」
Mさんから次々と繰り出される力強いセリフに、
ひばりも付き物が落ちたようにすっきりとした表情になっていた。
四六時中家にいるモラ吉だが、3日後の2月某日は出かけることが濃厚との事。
ひばりが家を出るXデーは、3日後となった。
「物に執着してはいけません。持ち出すものはお金で買えない物だけにして下さい」
諸々の決めごとや注意事項をを確認し、我々はオフィスを後にした。
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